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dead simple
TVドラマ作品3・その他(1990s〜)

The Healer
(TVムービー)

【スタッフ】
監督/マイク・ホッジス
脚本/G・F・ニューマン
製作/クライヴ・ブリル、G・F・ニューマン

【キャスト】
ポール・リス(ジョン・ラシター医師)
テレサ・バーナム(アン・メドロウ)
レオ・ブライトモア(トーマス・プライス)

[1994年イギリスTVミニシリーズ/カラー/120分/スタンダード/BBC制作]
日本未公開


Story

 青年医師ジョン(ポール・リス)はあるとき、脳死状態にあった患者の少年を覚醒させる。彼には他人を癒す不思議な力があったのだ。一躍マスコミの寵児となったジョンだったが、人々はその力を誤解し、救済を求めて彼の元へ詰めかけた。だが大勢をいっぺんに治すことはできず、まもなく彼は敵意の的となる。同僚たちは彼の存在を医療の脅威そのものと感じ、さらにメディアは彼が詐欺師であるとすっぱ抜こうとするが……。

About the Film

■特殊な力に翻弄される個人の物語
 『The Healer』はBBCチャンネルのためにホッジスが監督した、全2回・2時間のミニシリーズ。病や傷を癒す超能力を得てしまった青年医師の葛藤と、その周囲で巻き起こる騒動を描く。脚本を手がけたのは、G・F・ニューマン。主演は、ロバート・アルトマン監督の『ゴッホ/謎の生涯』(1990)で、テオ・ヴァン・ゴッホを演じたポール・リス。

 自らに備わった超自然の力に翻弄される個人という、『ブラック・レインボウ』(1989)にも通じるテーマであり、ホッジスが興味を惹かれたのもそこだった。彼は長回しを多用し、いわゆる典型的な病院ドラマのリズムとは異なる演出を試みているという。


Production Note

■恐怖の撮影
 本作の撮影は前作『Dandelion Dead』(1992)と同様、サウス・ウェールズでおこなわれたが、そこは絶好のロケーションとは言いがたい場所だった。

ホッジス「キャストはみな素晴らしかったが、撮影は本当にひどい体験だったね。ロケをおこなったマーサー・ティドヴィルは、無知と貧困に満ちた地域で、おそろしく雰囲気が悪かった。あるとき外からタイヤのきしむ音が聞こえ、何事かと思って窓から覗くと、路上にひっくり返った車の中から4人の少年が這い出てきて逃げ去って行った。かなりショッキングな光景だったよ。10歳にも満たない子供が注射針を貰いに救急病院へやって来るとか、何者かが墓地を荒らして死体をそこら中に放り投げたとか、ひどい噂には事欠かなかった」

 異様な環境で撮影を進めなければならなかったホッジスだったが、問題はそれだけではなかった。彼は撮影初日から脚本家のニューマンと現場で衝突したのだ。

ホッジス「ニューマンは、スタッフたちの面前で私の演出を妨害した。まったく許し難いことだ。私はすぐエージェントに電話して、ニューマンをセットから追い出すよう、BBCに連絡してくれと頼んだ」

 しかし、ニューマンはこの作品のプロデューサーでもあった。後に、ホッジスが危惧したとおり、同種のトラブルが編集室で発生する。

■ラストをめぐる衝突
 『The Healer』のクライマックスは、主人公ジョンが誰にも知られないところで奇跡を起こし、いずこかへと去っていくというものだった。ホッジスはその場面を、非常にシンプルな演出で描いた。

ホッジス「新約聖書にある奇跡の記述のように、平易で簡潔に表現するのが狙いだった。あまり手の込んだものにすると、真実味がなくなってしまう。主人公は、車椅子から転げ落ちた若い麻痺患者を助け上げ、椅子の上に座らせる。彼がそのまま歩き去ると、患者のねじれた下肢はまっすぐにほどけていくんだ。まるで朝に咲く花のように。そのシーンの撮影日は雨だったが、患者の姿から近くの樹にカメラがパンしていくとき、ちょうど雲間から太陽が覗いて、一陣の風に木漏れ日がきらめいた。まるで魔法のような瞬間だったよ」

 だが、ニューマンはその演出に満足せず、クライマックスの再編集を望んだ。

ホッジス「彼はもっと感傷的に奇跡を描きたかったんだろう。シーン全体にプッチーニの曲を流し、麻痺患者が輝くような笑みを浮かべ、バレエを舞う姿をスローモーションで撮ろうとしたんだ。まったく馬鹿げてるよ」

 ホッジスはかなりの低予算で作品を完成させたため、BBCは浮いた金でニューマンに追加撮影をさせることにした。しかし、本放映された『The Healer』に、そのフッテージが使われることはなかった。

ホッジス「結局、放映されたのは私のバージョンだった。金の無駄遣いだね。『The Healer』は、私がBBCのために仕事をした、最初で最後の作品だよ」



The Lifeforce Experiment
(a.k.a. The Breakthrough, Dead Men Talk)

(TVムービー)

▲ロシア版ビデオジャケット
【スタッフ】
監督/ピアース・ハガード
脚本/マイク・ホッジス、ジェラード・マクドナルド
原作/ダフネ・デュ・モーリア
製作/ニコラス・クレルモン

【キャスト】
ドナルド・サザーランド(マクリーン博士)
ミミ・カジク(ジェシカ・サンダース)
ヴラスタ・ヴラーナ(ロビー・オールマン博士)
コリン・ネメック(ケン・ライアン)
ミゲル・フェルナンデス(ジョージ・コーンウォール)

[1994年イギリス=カナダ合作TV映画/カラー/95分/フィルムライン・インターナショナル、スクリーン・パートナーズ制作]
日本未公開


Story

 かけだしのCIAエージェント、ジェシカ・サンダース(ミミ・カジク)に与えられた任務は、マクリーン博士(ドナルド・サザーランド)の助手として彼の行動を監視することだった。博士はコンピュータによって人間の夢を解析する実験をおこなっていた。しかし、それはマクリーンの計画の始まりにすぎなかった。


About the Film

■手を引く勇気
▲実験台の青年を演じるC・ネメック
 ダフネ・デュ・モーリアが1966年に発表した短編「第六の力/The Breakthrough」(短編集「真夜中すぎでなく」所収)を映像化したTVムービー。ホッジスは当初、演出も手がける予定だったが、途中降板して脚色のみを担当した。

ホッジス「脚本で失敗するのも十分に苦痛だが、監督していて失敗するよりは断然マシだ。もし監督として不幸な映画作りに携わってしまったら、人生は地獄と化す。だから脚本を書いている間は、はたしてこれが本当に幸福な気持ちで参加できる作品かどうか見極める時間がある、ということだ。もし悪い予感がしたなら、さっさとおさらばすること。『The Lifeforce Experiment』もそんな1本だった。脚本を作りながら、プロデューサーからああしろこうしろ、こう変えろと言われていたときから、ひどい事態になるのは目に見えていたからね」



Murder by Numbers
(TVドキュメンタリー)

【スタッフ】
監督/マイク・ホッジス
監督補・編集/ポール・カーリン
脚本/ロブ・ホワイト
製作/ポーラ・ジャルフォン、コリン・マッケイブ
撮影/ジョナサン・パートリッジ
音楽/ダン・ジョーンズ

【キャスト(本人として)】
マーク・セルツァー
ゲイリー・インディアナ
エイミー・トービン
ブライアン・コックス
リドリー・スコット
デイヴィッド・フィンチャー
ジョン・マクノートン
リチャード・フライシャー

[2001年アメリカTV映画/カラー/51分/インディペンデント・フィルム・チャンネル制作]
日本未公開

About the Film

■現実と映画の「殺人」をめぐって
 『ルール・オブ・デス/カジノの死角』(1998)が全米でヒットした後、マイク・ホッジス監督がアメリカのTVチャンネル「Independent Film Channel」のために作ったドキュメンタリー作品。フリッツ・ラング監督の『M』(1931)から、マイケル・パウエル監督の『血を吸うカメラ』(1960)、そしてリドリー・スコット監督の『ハンニバル』(2001)に至るシリアルキラー・ムービーの変遷を辿りながら、映画の中で連続殺人者がポピュラーな悪役の座に上り詰めていった過程を検証する。

 それと同時に、「映画人の考える犯罪心理傾向」の意識的/無意識的な類似性も浮かび上がらせる。我々観客がなぜシリアルキラー・ムービーに惹かれるのか、ホッジスらしい物騒な分析もされているとか。

■全ては数の問題
 「今や、全ては数の問題だ」とホッジスは言う。映画における殺人もその例外ではない、と。

ホッジス「この作品では、フィルムの中に描かれるシリアルキラーと、現実世界におけるそれの、時代的推移を記録している。この2つはループの関係にあり、互いに影響を与え合っている。まあ、そんなことは今更語るまでもないくらい、明白な事実だがね。だが映画史の初期において、彼らは“被害者”として扱われていた。例えば『M』でピーター・ローレが演じた殺人者は、己の性を食い止める術を知らない、哀れな男だ。そして時代はやがて、観客を極限状態にまで追いつめる『サイコ』や、『血を吸うカメラ』といった作品の登場へと移行する。“Murder by Numbers”の時代へと」

■錚々たるゲストが語る「殺し」
 出演は、短編小説集『マリアの死』などの著者であり、現代アメリカ心理学の優れた研究者として知られるゲイリー・インディアナ。『Serial Killers: Death and Life in America's Wound Culture 』の著者マーク・セルツァー。『ハンニバル』のリドリー・スコット監督。『セブン』(1995)のデイヴィッド・フィンチャー監督。『絞殺魔』(1968)のリチャード・フライシャー監督。『ヘンリー』(1986)のジョン・マクノートン監督。『レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙』(1986)で最初にレクター博士を演じたブライアン・コックス。「ヴィレッジ・ヴォイス」の批評家エイミー・トービンなど。トービンは『サイコ』(1960)に倣い、バスタブの中でインタビューを受けている(でも風呂場で音が反響してしまって、ひどい音響状態だとか)。監督補・編集のポール・カーリンは、次作『ブラザー・ハート』(2003)でも引き続き編集を担当。

 本作は、ごくたまに、バーベット・シュローダー監督による同題のアメリカ映画『完全犯罪クラブ/Murder by Numbers』(2002)と間違われることもある。


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